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多汗症について

皮膚病AtoZ 「多汗症について」
暑い時期になってくると汗が気になりますね。更年期を迎えて顔のほてりとともに汗が多くなった方もおられるでしょう。皆さんの汗対策はいかがでしょうか?今回は汗についてお話です。
「外用制汗剤」「ワキのボトックス注入療法」について興味のある方は,別に資料を用意していますので,スタッフまでお申し付け下さい。

汗について
夏になり、気温が上がると誰しも汗の量が増えますが,これは水分を体外へ出してそれが蒸発する際に気化熱を奪われることによって温度が下がるので,体温調節の役割をしている「温熱性発汗」と言われます。それ以外に緊張すると汗が増加するような「精神性発汗」,辛いものを食べると発汗量が増える「味覚性発汗」など,発汗にも種類があります。相互に干渉しあっていて,環境温度が低いと精神性発汗の程度も軽くなることが知られています。いわゆる発汗に関係しているのはエクリン汗腺で全身に約200~500万個存在していると言われています(臭いに関係するのがアポクリン腺でワキや陰部に分布)。エクリン汗腺は交感神経支配でコリン作動性(アセチルコリンが媒介)なので,交感神経が休まる夜に汗の量も少なくなります。人間は1時間で1㍑,1日で約10㍑発汗する能力を持つと言われます。発汗が多い部位は個人差が大きいようです。年齢とともに発汗量は低下してゆき,一般的には基礎代謝量や温熱性発汗開始温度(♂:30℃,♀:32℃)の差により男性のほうが女性よりも発汗量は多いようです。

多汗症の種類
大きくは全身の汗の量が多くなる全身性多汗症と脇や手足など限られた部位の汗が著明に多い限局性多汗症に分けられます。全身性多汗症は内分泌疾患,神経系疾患などに伴って生じることも知られています。例えばバセドウ病,産じゅく期(産後4〜5日,女性ホルモン欠乏),糖尿病(上半身),低血糖などが知られていますので,時にこれらについての検査が必要になります。また,更年期になって顔のほてりとともに汗が増える「ホットフラッシュ」という現象もよく知られています。

多汗の問題点
発汗後に水分蒸発すると塩分残存しベタつきや汚れ付着しやすい,皮脂とまじり一層テカリ生じて不快感や化粧崩れ生じる,衣服の汗じみなど以外にも,あせも(汗疹),細菌が繁殖して汗臭増加(腋臭症,足臭),イボや水虫になりやすいなど皮膚疾患も多発しやすくなります。

発汗を抑えるスキンケア
① 汗を洗い流す:石鹸,シャンプー,シャワー,入浴。ミョウバン浴も有効です。
② 市販制汗剤:主成分はクロルヒドロキシアルミニウム(ACH,日本での主流),アルミニウム・ジルコニウム化合物(ACHよりも20〜30%高い制汗率で,米国では主流)などです。使用感からはパウダースプレー型が好まれていますが,効果が不十分であれば効果に優れるロールオン型やスティック型を試してみましょう。
③化粧崩れを抑える:脂取り紙,耐水性・耐皮脂性化粧品
④汗の吸着:シッカロール,ベビーパウダー,亜鉛華,汗とりパッド
⑤臭いのマスキング:オーデコロン

多汗症のメディカル・ケア
1)保存的治療:一定の効果はあるものの,効果持続期間は一時的です。体への侵襲は少ない方法です。
① 外用剤
a.塩化アルミニウム:金属塩が汗孔を閉塞したり,汗腺組織の萎縮を生じさせます。外用の主流ですが,刺激症状,衣服への着色などが生じることあります。部位や症状に合わせて水基剤とエタノール基剤や濃度の変更をします。
b. 抗コリン薬:刺激はありませんが,広範囲に使用すると時に口渇を生じることがあります。
② 内服薬
a. 抗コリン薬:プロバンサイン。前立腺肥大や緑内障の方では使用できません。
b. 抗不安薬:グランダキシン,セディールなど。
c. 漢方薬:防已黄耆湯,四逆散,茵ちん蒿湯,桂枝加竜骨牡蠣湯,補中益気湯など。
③ イオントフォレーシス:医院・自宅などで頻回に施行。専用の機械の購入が必要になります。
2)ボトックス(ボツリヌス菌毒素製剤)注入
ボトックスを直接皮膚に注射し,神経終末でのアセチルコリン放出を抑制することによって効果を発揮します。3-6ヶ月の間,効果が持続します。脇の下には著効しますので,重症例では第一選択になることもあります。手のひらでは一過性の筋力低下が生じることがあります。保存的治療と外科的治療の中間的な位置付けになります。
3)外科的治療
① 汗腺組織の除去:「わきが」の手術に準じる。ロータリーシェービング・翻転法など。
直後に比べると,その後に効果の減弱が生じますが,ある程度は永久的な効果を発揮します。血腫予防のために術後圧迫が必要になります。時に手術痕が問題になることもあります。
② 胸腔鏡下交感神経遮断:手のひらにおいては著効します。脇の下に対しては有効性が低いようです。代償性発汗(手のひらの発汗は低下するも,背中などの他部位の発汗が増す)が高率に生じるのが問題となります。

治療の選択(どれから試すか)
多汗症の程度には個人差があります。一般的には体への侵襲が少ない方法から順次試してゆくのがよいでしょう。外科的療法の方が効果の持続性などの点でメリットはあるものの,生じてしまった副作用も持続することになるからです。軽症の方では市販の制汗剤が一番お手軽ですし,刺激症状などを含めた副作用も少ないでしょう。それで効果が不十分であれば,次にクリニック処方の外用制汗剤(部位や症状によって種類が異なります)をお試し下さい。全身性であったり,精神性発汗の要素が強い方では内服を試用してみてもよいでしょう。ワキで効果が不十分であったり,刺激のために使用できない,頻回に使用しなければならないので不便である,というようでしたら,ボトックス(ボツリヌス菌毒素)注入療法をお勧めします。手足では外用制汗剤の効果が不十分なことが少なくないので,濃度を変更したり,組み合わせでの使用を試みてもよいでしょう。イオントフォレーシスも有効な場合があります。これらいずれにおいても効果に満足が得られなかった際には,そのリスクをも考慮した上で外科的治療をお考え下さい。ワキについては,外科的治療を行っても発汗減少にとどまるため,中には夏にはボトックス注入療法や外用制汗剤を組み合わせて対処している方もおられます。

皆さん,それぞれが自分にあった方法で適切な汗の処理を行い,快適な生活をお送りください。不明な点がございましたら,お気軽にご相談下さい。

Q1.汗止めの塗り薬(制汗剤)にパウダーと液がありますが、どのように使いわけるのですか?また、主成分の塩化アルミニウムの作用について教えてください。

A1.塩化アルミニウムは、皮膚の成分と一塊になって結晶を作り、汗の出口を塞ぐのが主な作用と考えられています(長期使用による汗腺組織の萎縮も報告はされています)。そのため、1日の中でも交感神経が落ち着いて少しでも発汗の少ない夜に濃度の高い液剤(20%濃度が基本で、基剤には水とエタノールの2種類を用意しています)を使用していただきます。発汗の減少が実感できれば、使用頻度を数日に1回などと減らしてゆき、最小限度で維持することを目的としています。一方、パウダーにはごく低濃度の塩化アルミニウムが含まれているため、症状の軽い方はこれだけでコントロールされますし、朝使用することによって、タルクが発汗した水分を吸着してくれます。また、わきが(腋臭症)の方の臭いを少しでもカモフラージュする目的でベルガモット(光線過敏を起こす成分を除去したもの)を配合しています。

2005年04月13日

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