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水虫治療について

皮膚病AtoZ 「水虫治療について」
1)病因:真菌(カビ)が動植物の死後の腐敗過程で周囲物質から栄養摂取して繁殖するように、体の表面を覆う表皮細胞が分化終了して死んだ細胞である角質に寄生あるいは腐生した状態。特に足の裏は角質層が非常に厚く、加えて厚い角層を柔軟に保つために水分量が多く、現代では長時間の靴の着用にて湿潤しやすいので真菌には好ましい環境なのです。
病態:真菌は種々の分解酵素を分泌して角質の蛋白(ケラチン)を分解吸収しながら増殖。真菌が角層を超えて、生細胞にまで侵入することはほとんどありませんが、菌が分泌する分解酵素、分解産物、菌表面の多糖類などは内部へ浸透し、免疫学的に認識され、角層内に寄生する真菌に対する免疫反応が引き起こされます。すなわち角層内で産生される抗原(真菌関連物質)によって生じる、持続的な免疫反応が臨床像として現れるため、本人の免疫状態によって状態や経過が異なります。
原因:土壌内真菌がほとんどで、約90%は、Trichophyton ruburum, T. mentagophytes, Epidermophyton floccosumの3種類。現在では、患者から配偶者への水平感染、あるいは親から子への垂直感染などの家族内感染がほとんどです。いわゆる「垢(あか)」と共に真菌が脱落するので、スリッパ、脱衣マット、靴下、靴、爪きりなどが媒体となります。

2)臨床病型
部位別では①頭部白癬,②白癬菌性毛瘡,③体部白癬,④股部白癬,⑤手白癬,⑥足白癬,⑦爪白癬 などに分けられる。
足白癬(水虫)の臨床病型
小水疱型:透過性亢進によって表皮内にかぶれによく似た水疱が生じ、表皮内神経線維の刺激にて強い痒みが生じる。
趾間型:趾間に隙間がないよいうな足では、趾間が慢性的に湿潤して白くふやけた局面を形成する(マタグサレ)。ふやけた角層は防御機能を失うので、二次的な細菌感染やカブレ(接触性皮膚炎)を起こしやすい。
角質増殖型:生体が炎症機転のみで真菌を排除できない場合には慢性に移行しますが、持続する炎症(サイトカインなど)によって表皮細胞のターンオーバーが早まるため、角層が肥厚して角質細胞脱落も亢進するため、それと共に一部の菌も脱落します。肥厚した角質の表面は保水機能に乏しいので、水分を失い体積が減少し、表面にヒビワレが生じるためにガサガサの足底になるものです。
(菌側の繁殖力と生体側の排除力との拮抗の結果、「痒み」・「水疱」・「肥厚」などの出現する症状が異なり、菌側が優勢あるいは宿主側が減弱していると肥厚型になりやすい。)
無症状型:真菌が角層のごく表層にとどまり生体が認識しない場合や生体反応が微弱な場合には免疫反応が生じないために症状も病変も存在しない。また「痒み」が少ないと認識されにくい。すなわち無自覚なキャリアーは多数存在する。

3)治療
薬剤選択:アゾール系(イミダゾール系、トリアゾール系など)の合成抗菌剤は真菌細胞膜の主要成分であるエルゴステロールの生合成を阻害するため、白癬菌以外の真菌症(カンジダ、癜風など)にも有効であり、菌の同定が困難な場合にも使用しやすいという特徴があります。
投与法:皮膚表面の角層に寄生している真菌に抗真菌剤を高濃度で到達させるためには選択性、コスト、安全性のいずれの面においても外用(病変部に直接薬剤を塗布)が、全身投与(内服)に勝ります。爪病変、病変部にびらんや細菌による二次感染があって外用治療が困難な時期、宿主の免疫力低下状態、深在性真菌症においては全身投与が適応になります。
外用剤の剤型:角層は異物を内外いずれの方向へも透過させないバリアであり、それを破壊して薬物を浸透させるには、水分含有量を上げる(ふやかせる)、細胞間脂質を除去する(脱脂)という方法になります。いずれにしても本来の角層機能を破壊するため水虫の外用剤はかぶれや細菌による二次感染などの副作用を来たしやすくなるのです。
(1)軟膏
油性基剤を塗ると皮表からの水分喪失が抑制され、角質水分量が次第に上昇して薬剤が浸透。皮膚への刺激性が少ない。効果が持続。欠点は油脂性皮膜を作って作用発現するため、効果発現までに時間がかかること、薬剤浸透性が弱い、ベタベタして不快などである。外用後にはガーゼや木綿の靴下で覆う。
(2)液(ローション・ソリューション)・ゲル
基剤に含まれる水によって角層浸透性を亢進させて薬剤の浸透性を上げる。伸びや使用感がよい。アルコール基剤は皮脂腺からの脂質は溶解するが細胞間脂質は溶かさないので、角層の浸透性を変えないで付属器への吸収が果たせるため、被髪頭部などに向く。但し、ゲルなどをはじめ刺激性は強い。
(3)クリーム
油と水が混合された基剤であり、基剤に水を含むために入浴直後に外用する必要がなく、早く大量に薬剤が浸透しやすいので汎用される。時に含有される界面活性剤などによる刺激感やかぶれが出現する。
(4)角質溶解剤
尿素製剤やサリチル酸製剤が用いられる。角質を浸軟させて薬剤の透過性を高める。また、角層を薄くする。また、サリチル酸には抗真菌作用もある。
(5)閉鎖密封(ODT)
足底の角層が厚く肥厚している場合や爪に薬剤を浸透させる目的で、クリームまたは液剤を外用した上からラップにて覆い、角質を膨潤させて薬剤をより浸透させる。先ず尿素製剤でODTを行い爪などの角質を柔らかくして削り、その後に抗真菌剤を外用して浸透を高める。
(6)内服
① グリセオフルビン(フルビスタチンUF®など)
静菌作用(真菌のDNA合成阻害:分裂抑制)であるため、500-1000mg/日を長期(治るまで)連続投与が必要。コンプライアンス不良。日光過敏症、耐性菌、ワーファリン作用減弱、肝機能障害,胃腸障害,頭痛などの副作用(副作用発現率:28.3%)。
② イトラコナゾール(イトリゾール®)
400mg/日を1週間内服した後3週間休薬するという投与法(パルス療法)を3回繰り返す。薬剤が角質に高濃度で移行して貯留することに加えて、副作用と薬剤費の軽減に貢献。薬剤相互作用に留意。副作用発現率は7.94%。
③ テルビナフィン(ラミシール®)
125mg/日を24週間連続短期投与。その後1-2ヶ月経過観察して、必要であれば再開。時に肝機能障害や味覚障害。薬剤相互作用が少ないのが利点。副作用発現率は10.76%。
*2),3)は真菌の細胞膜の成分であるエルゴステロールの合成阻害をするため,薬剤の有効成分が病巣に届くと真菌の細胞膜が破れて死滅する。人間の細胞膜にはエルゴステロールが含まれていないため副作用が少ない。また飛躍的に角質への親和性が高くなっている。グリセオフルビンに比較すると格段に副作用は減っているものの,いずれも薬剤の排泄に際して肝臓を経由するため,定期的に血液検査を行う必要があります。

水虫処置の実際

1. 水疱・膿疱:水疱を破ると「痒み」が軽減。
2. びらん・潰瘍:流水や生理食塩水を用いて物理的に異物や細菌を減らす。軟膏基剤を選択して刺激を少なくし、亜鉛華軟膏やガーゼを併用して病変の乾燥に勤める。カブレや細菌の二次感染併発例では、その治療を優先。
3. 角質増殖型:内服薬の併用、尿素軟膏によるODTを併用しないと難治である。クリーム剤を選択し、入浴後の角層が充分に水を含んでいるときに外用するのが薬剤浸透の面からは有利である。
4. 肥厚した爪:基本的には内服薬を使用。やむを得ず外用剤単独での治療の際には、爪は多くの場合肥厚や混濁していても爪表層は保たれており、単純に外用しても薬剤が到達しない。尿素軟膏のODTで軟化させた後にヤスリやルーターを用いて爪表面を削って薬剤の浸透を高める。特に表層混濁型では物理的に感染病巣を減少させることが重要。入浴後の爪が浸軟している間に、肥厚した爪床部分に向けて爪先から液剤を流し込む。
(外用療法の基本:①目に見える病変だけではなく、広範囲に外用。全てのユビの股から足の裏全体に両足ともに外用。②症状が消失してからも、最低でも3から6ヶ月は外用し続ける。再発を防ぐためです。③毎日入浴後に外用するように習慣づける。)
4)日常的なスキンケア
① 治療的スキンケア:白癬菌は高温・多湿を好みます
・ 患部の清潔と乾燥:付着した白癬菌や栄養物としての角質除去,細菌の二次感染防止
・ 毎日入浴,石鹸での洗浄,入浴後の乾燥
・ 通気性のよい木綿の靴下を着用,長靴や皮靴を避ける,趾間型では足袋型靴下も一法
・ 多汗症があれば塩化アルミニウムなどの制汗剤の併用
・ 裸足がよいが,感染源にもなりえる
② 感染経路とその予防:患者は菌を散布し,菌は環境中で生存しています
・ 共同浴場やプール使用後には健常人の足底から白癬菌分離
・ 掃除機塵埃から白癬菌生育
A:白癬患者からの菌の散布減少→外用療法施行
B:環境中に生存中の菌の減少→掃除,マットの洗濯やアイロン掛け・濡れタオルでの拭き取り
C:菌の足底への付着防止・付着菌の脱落促進→石鹸で洗浄,タオルで拭く,裸足ですごす
③ 予防的スキンケア:菌の足底への付着防止・付着菌の脱落促進
・ 裸足になる公共施設での感染:足拭きマットへの注意
入浴時に石鹸で洗浄,タオルで拭いた後に湿ったまま靴下を履かないで裸足ですごす
・ 家庭内感染:同居者に白癬患者がいると感染率高い
住居内の畳や絨毯の上を裸足で歩行するだけでも菌の付着可能性あり

お願い

家族内に同じ症状の人がいればピンポン感染を防止する意味でも同時に治療した方がよいでしょうし,水虫と思っているものが実は他の皮膚疾患の場合もあるので皮膚科を受診して,顕微鏡による検査を受けて下さい。また受診する際の注意点として,患部に水虫薬を使用すると一次的にせよ白癬菌が減少して菌の検査での検出率が悪くなります。同じく水疱をつぶしたりしても同じく検出率が低下してしまい確定診断が下せない場合があります。爪も切らずに,患部の症状がはっきりしている時点で未治療の状態でできるだけ受診してください。症状にもよりますが数ヶ月から1年という期間が必要になりますので,根気よく治療を続けてください。またかぶれや化膿の症状があるときは早めに皮膚科を受診してください。

2005年05月13日

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