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プラセンタ注射
2007,09,03, Monday
皮膚病AtoZ 「プラセンタ注射」
プラセンタ注射プラセンタの不思議な働きには、紀元前もの昔から着目されていました。約4000年前に中国では「紫河車」という名で、秦の始皇帝の時代には不老長寿の薬 として珍重していました。西洋においてはクレオパトラに始まり、マリー・アントワネットも若返りと美容目的でプラセンタを使用していたと言われています。
プラセンタとは胎盤のことで、胎児の発育成長に必要不可欠なものです。母親の体内でわずか10ヶ月の間に、1個の受精卵を平均3kgまでに育て上げるとい う驚異的な働きをもった組織です。したがって、胎児の成長に必要な生理機能や栄養素をもっています。プラセンタは体内において調整作用をもち、各部各所を 本来あるべき状態に戻そうとする力を発揮します。その作用から医療用医薬品や一般医薬品に広く利用され、自然治癒力を高める自然薬として注目を浴びていま す。
日本で現在行われているプラセンタによる治療法は、昭和20年代に旧ソ連や中国を経て伝わり、久留米大学医学部の稗田先生を中心に研究実践 された胎盤埋没療法を起源とします。日本に伝わった当時は麻酔をかけ、皮膚を切開し、胎盤を埋め込み縫合するという方法がとられていましたが、麻酔や切開 なしで胎盤を体内に入れる方法として開発されたのがプラセンタ注射です。
プラセンタの有効成分
医院で使用されるプラセンタ注射は、ヒト胎盤から抽出されたものです。そのため、本来は①各種のホルモン、②各種の成長因子(サ イトカイン:細胞が産生する蛋白で、それに対するレセプターを持つ細胞などに働き、免疫系の調節、炎症反応の惹起、抗腫瘍作用など以外にも細胞増殖、分 化、抑制といった生体の恒常性維持に重要な役割を果たす生理活性物質であることが明らかになってきています。インターフェロンなどもこれに属します)、③その他の蛋白質、④各種アミノ酸、⑤各種ビタミン、⑥各種ミネラル、 などなどの複合物です。製品化の際に、ホルモンはご存知のごとく微量で多大な影響を及ぼすこと、大きな分子量の蛋白質はアレルギーを起こす要因になりうる ことなどから除去されていますので、それら以外が主成分と考えられます。また加水分解されて抽出されていますので、各種成分は水溶性成分となります。
保険診療においても効能・効果として認められているものには、「肝機能障害の改善」「更年期障害ならびに乳汁分泌不全の改善」があげられます。肝機能障害 の改善には②の成長因子の仲間であるHGF(肝細胞増殖因子)などが作用し、更年期障害ならびに乳汁分泌不全には実際のホルモンは含まれていないもののエ ストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンバランスを整える作用によって効果を発揮しているものと考えられます。また、成長因子にはさまざまなものがあ り、EGF(表皮細胞増殖因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)などが肌に働きかけることによって美肌効果がもたらされるものと期待されます。
美白作用、保湿作用以外にも、
●組織代謝の促進作用、結合組織の新生作用、細胞活性の促進作用
●血行促進作用、活性酸素除去作用(抗酸化作用)、抗炎症作用
●免疫賦活作用、抗アレルギー作用
などなどプラセンタの魅力は本来が生体物質であるからこそ、多くの成分が含まれており、種々多様な作用を期待させることにあるのでしょう。
美容目的の使用:アンチ・エイジング
本来、生体内ではプラセンタ(胎盤)は胎児を育てる目的の臓器で、胎児と母体をつなぐものです。胎児は胎盤を通じて母体から栄養分をもらっていますが、胎 盤自体も胎児を成長させるホルモンや生理活性物質(サイトカイン、つまりインターフェロンの類ですね。)を沢山作っています。このような成分の一部がプラ センタ・エキスに残っており(水溶性の成分)、それらがプラセンタの有効成分なのです。胎児環境はとてもすぐれたもので、生後の皮膚は深く傷つくと傷跡が 残りますが、羊水・羊膜に接した胎児の皮膚では瘢痕(傷跡)を残さない(scarless wound healing)ことが知られていますし、皆さんご存知のように臍帯血には骨髄と同じ幹細胞が多く含まれることから移植にも用いられます。
さ て、身体の細胞達は年をとるにつれて不活性化して、働きが悪くなってゆきます。これらの働きが鈍った細胞達を、なんらかの手段で目覚めさせて働いてもらう (活を入れる)、これが内科的アンチ・エイジングの基本です。プラセンタ・エキスが身体に入って細胞に触れると、細胞は「もしかして自分はまだ胎児?」と 錯覚して、騙され目を覚まし、働き始めます。身体にある総ての細胞がプラセンタに騙される(=プラセンタで活性化される)のを期待するものです。
安全性:献血制限について(2006年夏以降)
製薬会社が提携している国内の産科病院に健康な妊婦さんを紹介してもらい、出産前に血液検査でチェックした上で、妊婦さんと出産後に胎盤をもらう契約を交 わします。そうして集められた胎盤からは、含まれているステロイド・ホルモン(副腎皮質ホルモン・女性ホルモン・黄体ホルモンなど)は、製品の製造工程で 取り除かれています。もし万が一、細菌はもとより、B型肝炎、C型肝炎、エイズなどのウイルス、狂牛病のプリオンが残っていたとしても、製造工程で130 度の高温処理で完全に滅菌されているので基本的には安心です。但し、念には念をとの考えから、2006年夏以降は献血制限が設けられました。BSEが問題 化した時に、イギリス滞在暦がある人に献血制限を出したのと同じ扱いだと考えられます。
注射法・料金など
当院では更年期障害の方には保険にてメルスモン注射の取り扱いを行っています。肝機能障害の方にはラエンネックが適応となっています。その他の目的での注射は自費診療となりますのでご了承ください。
注射方法は、主に皮下注射と筋肉注射です。注射間隔については、決められた方法はなく、最初は週に2日くらい注射を行い、1~2ヶ月後からは、自分に合っ たペースへ減らしてゆき、維持します。代謝されて無くなるものですから、一度にまとめ打ちをするよりも、回数を分けた方が効果的だと思います。
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河合先生からプラセンタとヒト成長ホルモン(HGH)の関係についてあるお話を伺いました。以下に一部改変して引用します。
アメリカでは、アンチ・エイジングといえばHGHのことを言うほどHGHが流行りです。日本でもHGHを売り物にしている美容クリニックもあるようです が、とても高価で検査代などを入れる数百万円ほどかかるそうです。内服のサプリメントでは吸収されませんし、消化酵素などで分解されてしまいますので、 HGHは注射以外では体内に入らないと考えられます。プラセンタ・エキスを注射したら、もしかしたらHGHを注射したときと同じ効果があるのではないか? というのです。HGHを注射すると、たった20秒で血液から消えてしまうので測定することも容易ではなく、実際にどのように働いているのかは詳しく判っ ていません。
HGHそのものを測ることが難しいので、HGHのかわりに何か目安になる成分はないかと調べました。その結果、HGHが脳から分泌 されたり、注射で身体に入ると、少し時間をおいて身体が造り出すあるサイトカイン(成長因子:ホルモン様作用をする物質)が血液中に増えてくることが判り ました。それがIGF-1(インシュリンに似た成長因子の1)と呼ばれるもので、作用時間が長いのでHGHの作用の大部分は、実はIGF-1の働きではな いか? という説もあります。極論を言ってしまえば、HGHは、IGF-1を分泌させるための引き金の役割だけかもしれないのです。
さ て、このIGF-1は安定して血液中に存在しますから測定可能で、IGF-1の値が上がっていたらHGHが血液中にあった証拠とする、というように解釈さ れています。つまりHGHがあればIGF-1も増える、IGF-1が増えていればHGHが出ている、というわけです。
ここからが本題ですが、神 戸の美容外科の中井先生が、試しにある患者さんの了解を得てラエンネックを点滴したあと血中のIGF-1を測ってみたところ、なんとIGF-1が増えてい たとのこと。つまりラエンネック(メルスモンも可能性があります。)はHGHとしての働きもある!?可能性が考えられるのです。
*現時点ではHGHのアンチエイジング効果に対して肯定的・否定的なデータとも報告されています(筆者注釈)
参照:美容皮膚科診療:プラセンタ注射、 吉田クリニック:プラセンタ療法